請負契約の解除は、契約内容や解除理由によって手続きや請求義務が大きく異なります。注文者による解除では、施工業者に対する損害賠償や出来高に応じた請負代金の支払いが必要になる一方、施工業者の契約違反があれば債務不履行を理由に契約解除や損害賠償請求が可能です。本記事では、建設業の請負契約解除のルールや、請負契約書に記載される解除条項についてわかりやすく解説します。工事請負契約の解約・解除に関する基本ルール工事請負契約の解約・解除は、施主の都合による場合と施工業者の契約違反(債務不履行)による場合の2つに分けられます。施主都合による解約・解除のルール施主側の事情で工事請負契約を終了させる方法として、「合意解約」「手付解除」「民法の請負規定に基づく解除」の3つがあります。合意解約施主と施工業者が話し合いのもと契約を終了させる方法です。解約する際の条件や違約金についても、当事者同士の合意によって決めることが一般的です。手付解除施主が施工業者に支払った手付金を放棄することで契約を解除する方法です(民法第557条第1項、第559条)。ただし、施工業者が工事に着手している場合には、この方法での解除は認められません。民法の請負規定に基づく解除施工業者が工事を完了する前であれば、施主は施工業者の損害を補償することで契約を解除できます(民法第641条)。施工業者の契約違反による解除のルール施工業者が契約違反を犯し、必要な是正措置を講じない場合、施主は債務不履行を理由に契約を解除できます(民法第541条、第542条)。債務不履行解除を行う際には、施主が施工業者に対して損害賠償請求を行えるかどうかがポイントになります。契約内に違約金や損害賠償の規定がある場合、たとえ実際の損害が規定額を超えても、原則として超過分を請求できない可能性があるため注意が必要です。ただし、消費者契約法が適用される場合には以下の点が考慮されます。施工業者に故意または重過失がある場合、違約金の規定は適用されません(消費者契約法第8条第1項第2号)。施主が支払う違約金が施工業者の平均的な損害額を超える場合、その超過部分は無効となります(消費者契約法第9条1号)。注文者からの契約解除は2つのケースを正しく見極めることが重要注文者が請負契約を解除する場合、「請負人の契約違反を理由とする解除」と「請負人に契約違反がない注文者都合による解除」の2種類があります。請負人の契約違反による解除(改正民法第541条)請負人に契約違反がない場合の解除(改正民法第641条)前者は、請負人が契約上の義務を果たしていない場合に適用されるため、注文者にとって有利な条件で解除が可能になります。一方、後者は注文者の一方的な都合によるものであり、請負人に対して一定の補償が必要となる点に注意が必要です。契約解除の際には、どちらのケースに該当するのかを正確に判断し、それに応じた適切な手続きを取ることが求められます。注文者が請負人の契約違反を理由に契約を解除する際のルール工事が予定通り進まない、施工が契約内容と異なるなどのケースでは、注文者は契約解除が可能です。この場合、適用されるルールは以下のとおりです。請負人の契約違反によって注文者に損害が発生した場合、損害賠償請求が可能(改正民法第415条)引き渡し後に施工不良を理由とする解除には期限がある(改正民法第637条)請負人の責任による解除であっても、完成部分に応じた請負代金の支払いが必要(改正民法第634条2号)請負人の契約違反による損害賠償請求請負人のミスや不履行によって注文者が損害を受けた場合、補償を求めることができます(改正民法第415条)。例えば、工事の不具合を修復するために別の業者へ依頼した場合、その修補費用を請求することが可能です。損害賠償請求は契約違反に基づく法的権利の一つであり、具体的な請求範囲や手続きには慎重な判断が求められます。施工後の不具合による契約解除は期限に注意建物の引き渡し後に不具合が判明した場合、注文者は施工不良を発見してから1年以内に請負人へ通知する必要があります(改正民法第637条)。ただし、契約書に特別な定めがある場合は、その内容が優先されます。契約解除のタイミングを逃すと、解除が認められなくなる可能性もあるため、契約書の内容を確認し、早めに対応することが重要です。完成部分に応じた請負代金の支払い義務がある請負人の契約違反が理由で工事が中断された場合でも、すでに完成している部分については注文者が代金を支払う必要があります(改正民法第634条)。たとえば、工期の遅れを理由に契約解除を行った場合でも、工事の進捗状況に応じて請負人へ報酬を支払う義務が発生します。このルールは判例でも認められていましたが、2020年4月の民法改正で明文化されました。解除の遡及効と注文者の支払い義務の免除通常、解除前に完成した部分の代金は請負人に支払う必要がありますが、請負人の工事に価値がなく、やり直しが必要な場合には代金の支払い義務はありません。例えば、施工不良が深刻で建物を解体しなければならない場合、注文者にとって未完成の工事は利益をもたらしません。このような場合、請負人が受け取った代金の返還を求めることができます。契約解除により、契約が最初からなかったものとみなされる「遡及効」が適用されるため、請負人には原状回復の義務が生じます。2020年民法改正による変更点請負人の契約違反を理由とする解除に関して、2020年4月の民法改正で以下の点が変更されました。建物の不具合を理由とする契約解除の禁止規定が削除従来は、社会的価値のある建物の契約解除が原則として認められていませんでした。しかし、大きな不具合がある場合には解除を認めるべきだとの判断から、この規定が削除されました。施工不良を理由とする契約解除の期間制限の変更以前は、建物の施工不良による契約解除は引き渡し後5年間(コンクリート造の場合は10年間)とされていました。しかし、2020年4月の民法改正により、「不具合を認識した時点から1年間」へと変更されています。解除手続きの正しい進め方契約違反を理由に解除を行う場合、事前に請負人へ「催告」を行う必要があります(改正民法第541条)。催告とは、「一定の期限内に契約違反を是正するよう請求する手続き」のことです。例えば、「7日以内に工事の不備を修正すること」などと期限を区切り、その期間内に修正がなされなければ契約解除が可能となります。請負人の契約違反を理由とする解除のリスク注文者が請負契約を解除する際、適切な手続きを踏まなければ解除が成立しない可能性があります。 その場合、請負人から請負代金の全額を請求されるリスクがあるため注意が必要です。また、請負人側に契約違反があったかどうかが争点となることもあります。このようなトラブルを防ぐためにも、契約違反の証拠を十分に確保することが重要です。証拠が不十分だと、「注文者都合による解除」とみなされ、請負人へ損害賠償を支払う義務が発生する恐れがあります。着工前の工事請負契約の解約・解除に関するポイント工事が始まる前であれば、契約解除の影響は比較的少ないと考えられます。しかし、契約を解除する方法によっては金銭的な負担が大きくなるため、慎重に手続きを進める必要があります。違約金や損害賠償が発生する可能性施主の都合で契約を解除する場合、施工業者に発生した損害を補填する義務が生じる(民法第641条)。たとえ着工前であっても、施工業者側ではすでに準備が進められており、以下のような費用が発生していることがあります。発注済みの建材費用設計や打ち合わせに要した人件費施工プラン作成費用地盤調査などの事前準備費用工事を継続していれば得られたはずの利益また、契約書で違約金の規定がある場合には、その条項が適用されるため、契約内容を事前に確認しておくことが重要です。手付解除は適用のタイミングに注意手付解除を利用すると、施主の負担を抑えて契約を解除できる可能性があります。手付金の額が違約金や損害賠償額よりも低い場合、手付解除を選択することで費用負担を軽減できるケースがあります。ただし、施工業者がすでに工事の準備に入っている場合は手付解除が認められない可能性があるため注意が必要です。たとえば、建築資材の発注や職人の手配が完了している場合、手付解除を理由に契約を一方的に解除することは難しくなります。施工業者に契約違反がある場合は損害賠償請求も可能施工業者の債務不履行によって契約を解除する場合、施主は施工業者に対して損害賠償を請求する権利を持ちます。着工後の工事請負契約を解約・解除する際の注意点工事が始まった後に契約を解除すると、その影響は避けられません。着工前の契約解除に比べて施主・施工業者の双方に大きな負担が発生するため、慎重な対応が求められます。特に、工事の中断や追加費用の発生により紛争に発展する可能性が高く、工期の遅れも避けられないことを念頭に置く必要があります。施工業者から高額な損害賠償請求を受けるリスク工事が進んだ後の契約解除では、すでに発注済みの建材費や施工にかかったコストが発生しているため、施工業者からの損害賠償請求が高額になりやすい傾向があります。また、契約解除の時点で完了している部分については、施工業者が出来高に応じた請負代金の支払いを求めることができるため、施主側の負担はさらに増える可能性があります。このようなリスクを考慮すると、施主の都合による着工後の契約解除は、特別な事情がない限り慎重に判断すべき事項となります。工事が始まると手付解除は認められない工事がすでに進行している場合、施工業者は契約履行に着手しているとみなされるため、手付金を放棄することで契約を解除する「手付解除」は適用されません(民法第557条第1項但し書き、同第559条)。つまり、工事が始まった後に契約解除を考える場合、他の手続きが必要となるため、手付解除を検討するなら着工前の段階で決断することが重要です。施工業者の契約違反を理由とする解除は争いが発生しやすい施工不良や設計上のミスなど、施工業者の債務不履行を理由に契約を解除する場合、施主は損害賠償を請求することが可能です。しかし、着工後の契約解除となると、施工業者側が損害賠償義務の有無や金額をめぐって強く争ってくる可能性が高いため、注意が必要です。特に、工事が途中で中断されることで生じる損害の範囲や、補修工事にかかる費用を誰が負担するのかといった問題が発生しやすくなります。トラブルを回避し、施主側が不利にならないようにするためには、契約解除の前に施工不良の証拠をしっかりと記録し、法的なアドバイスを受けることが不可欠です。契約解除後も、工事の完成度に応じた支払い義務が発生する施工業者側の契約違反を理由に契約を解除した場合でも、施主がすでに完成した部分の工事によって利益を受ける場合には、その割合に応じた報酬を支払わなければなりません(民法第634条第2号)。また、施主の都合による解除でも同様のルールが適用されるため、工事がどの程度進んでいるか、どこまでが施主にとって有益であるかが重要な争点となる可能性があります。施工業者と施主の間で意見が対立しやすい点でもあるため、専門家の意見を踏まえながら、適切な対応を検討する必要があります。契約違反の有無による工事請負契約の解除方法の違い新築工事の契約を解除する場合、施工業者に契約違反があるかどうかによって解除の方法や影響が異なります。どのようなケースに該当するのかを正しく判断し、適切な対応を取ることが重要です。施工業者に契約違反がある場合の解除施工業者が契約通りの工事を行わない場合、債務不履行を理由に契約を解除することが可能です(民法第541条・第542条)。以下のようなケースが該当します。施工ミスがあり、修補を求めても対応しない欠陥が深刻で修補が不可能なため、契約の目的が達成できない契約解除の方法は、工事の進行状況によって異なります。建物が完成した後の解除建物の引き渡し後に契約を解除する場合、契約全体が遡って無効となり、双方が原状回復義務を負うことになります。ただし、施主は不具合を知ってから1年以内に通知しなければならないという制限があります(民法第637条第1項)。建物が完成する前の解除工事途中で契約を解除する場合、既に施工された部分が施主にとって有益であれば、その部分の報酬を支払う義務があります(民法第634条)。また、別の施工業者に依頼する場合、追加費用が発生することが一般的であり、その差額について最初の施工業者に損害賠償を請求できる可能性があります(民法第415条)。施工業者に契約違反がない場合の解除請負契約では、通常の売買契約とは異なり、施主の判断で工事が不要になった場合でも、工事が完成する前であれば契約解除が認められます(民法第641条)。ただし、この場合、施主側の一方的な都合による解除となるため、以下のような義務が発生します。施工業者に対して、契約解除によって生じた損害を賠償する必要がある(民法第641条)使用済みの建材費や労務費だけでなく、工事が続いていれば得られたであろう利益(逸失利益)も損害賠償の対象となるたとえ着工前であっても、施工業者が契約に基づき準備を進めていた場合、損害が発生していれば施主はその負担を求められます。契約解除を検討する際には、契約書の内容を十分に確認し、必要に応じて専門家に相談することが大切です。請負人に契約違反がない場合の注文者都合による契約解除のルール請負人が契約通りに工事を進めている場合でも、注文者の事情によって契約を解除することは可能です。ただし、注文者が一方的に契約を終了させるため、請負人に対する一定の補償が必要となります。注文者が契約を解除する際には、以下の2つの義務が発生します。工事の進捗に応じた請負代金の支払い(改正民法第634条2号)契約解除によって請負人が被る損害の賠償(改正民法第641条)逸失利益も損害賠償の対象となる注文者の都合で契約を解除する場合、請負人が契約解除されなければ得られたはずの利益(逸失利益)も補償対象になります。たとえば、工事が途中でキャンセルされた場合、注文者は以下の費用を負担する可能性があります。完成済み部分に対する請負代金未完成部分の工事が続いていれば請負人が得られたはずの利益(逸失利益)すでに支出された建材費や労務費などの実費請負契約は施主側の事情で自由に解除できますが、契約解除によって請負人に経済的損失を与えた場合、その損害を賠償する義務がある点に留意する必要があります。着工前の契約解除と違約金の適用工事が始まる前に契約を解除する場合も、請負人に発生する損害を補償する必要があります。ただし、契約書によっては着工前の解除に関する特別な規定が設けられているケースがあり、違約金が発生する場合もあります。その場合は、民法の一般的なルールよりも契約書の記載内容が優先されるため、契約解除を検討する際には必ず事前に契約書を確認することが重要です。契約を解除する際のリスクを最小限に抑えるためには、違約金の有無や賠償範囲を把握したうえで適切な手続きを進めることが求められます。請負人による契約解除のルール請負人が請負契約を解除できるのは、注文者が契約違反をした場合、注文者が破産した場合、または双方が解除に合意した場合に限られます。特に、注文者の契約違反として考えられるのは、以下のような状況です。支払期限を過ぎても請負代金が支払われない注文者が工事の進行を妨害する必要な書類や情報の提供を怠るこうした場合、請負人が契約を解除するには適切な手続きを踏む必要があります。契約解除の前に催告が必要(改正民法第541条)注文者が契約違反をしていても、請負人はすぐに契約を解除できるわけではありません。原則として、まず「催告」を行い、それでも問題が解決されない場合に限り解除が認められます。例えば、注文者が代金を支払わない場合、請負人は一定の期限を設けて支払いを求め、その期間内に対応がなされなければ契約解除が可能となります。ただし、注文者が破産した場合には、この催告なしで解除が認められる場合があります。請負人は完成部分に応じた報酬を請求できる(改正民法第634条2号)契約が解除された場合でも、請負人は既に完成している工事部分について報酬を請求することが可能です。さらに、請負人に発生した損害についても、注文者に対して賠償を求めることができます(改正民法第415条)。この損害賠償には、以下のような費用が含まれます。既に施工が完了している部分の工事代金契約が継続していれば請負人が得られたはずの利益(逸失利益)未施工部分のために発注済みの材料費や人件費契約解除後も、請負人が損害を最小限に抑えるための適切な対応が求められます。2020年の民法改正による変更点注文者が破産した場合、請負人は契約を解除する権利を持ちます。この点については、民法改正の前後で特に変わりはありません。ただし、2020年4月の改正によって、工事が完了した後は、注文者の破産を理由に請負人が契約を解除することはできないと明確に規定されました。つまり、工事が完了した後に注文者が支払い不能となった場合、請負人は解除ではなく、代金請求の手続きを取る必要があります。請負人が契約解除を行う際の注意点注文者の契約違反が理由であっても、適切な手続きを踏まなければ契約が継続しているとみなされるリスクがあります。例えば、正式な解除手続きを経ずに工事を中断すると、注文者から「工事の遅延」を理由に損害賠償を請求される可能性があるため、慎重な対応が必要です。また、契約違反の有無が争点になることも考えられるため、請負人は注文者の契約違反を証明できる証拠を確保しておくことが重要です。工事請負契約を解約・解除する際の手続き工事請負契約を解除するには、民法や契約書の規定に基づいた正しい手続きを踏むことが不可欠です。特に、施工業者との間でトラブルが起こる可能性がある場合は、早めに弁護士へ相談し、適切な対応を取ることが重要です。施主都合による解約・解除の手続き注文者の都合で契約を解除する場合、解約方法によって進め方が異なります。合意解約施工業者と話し合い、解約条件を協議したうえで「解約合意書」を作成・締結することで契約を終了できます。この方法では、契約解除に伴う費用や条件を双方が納得したうえで決めることができるため、トラブルを最小限に抑えられます。手付解除・民法第641条に基づく解除手付解除や民法の請負契約の規定(民法第641条)に基づく解除を行う場合、施主は施工業者に対して内容証明郵便などで正式に解除の意思を通知する必要があります。この際、以下の義務が生じるため注意が必要です。施工業者に発生した損害の補償義務(民法第641条)すでに施工された部分がある場合、その出来高に応じた請負代金の支払い義務また、損害賠償の金額については施工業者との間で意見が分かれることが多いため、事前に協議を行い、できる限り合意を得ておくことが望ましいです。債務不履行による契約解除の手続き施工業者が契約上の義務を果たさない場合、債務不履行を理由に契約を解除することが可能ですが、解除の前に催告を行うのが原則です(民法第541条・第559条)。催告の流れまず、内容証明郵便などを利用して施工業者に対し、一定の期限を定めたうえで義務の履行を求めます。この際、催告と解除の意思表示を一度に行うことで、追加の手続きを省略できます。「○月○日までに工事の履行が行われない場合、契約を解除する」このように記載しておくことで、指定の期限が過ぎても履行されなかった場合、改めて解除通知を出すことなく契約解除が成立します。無催告で解除が可能なケース特定の状況では、催告を行わずに契約解除が認められる場合があります(民法第542条・第559条)。以下のようなケースが該当します。重大な設計ミスがあり、施工業者が修正できない場合施工業者が工事の続行を明確に拒否した場合このような場合には、事前の催告なしに契約を解除することが可能です。新築工事の途中で欠陥が見つかった場合の対応策新築工事中に問題が発覚した場合、すぐに契約解除を検討するのではなく、まず施工業者に適切な対応を求めることが重要です。では、工事の途中で欠陥が判明した際、施主はどのような対応を取ることができるのでしょうか。具体的な対応方法施工業者に修補を請求する注文住宅の契約において、施工業者は契約通りの工事を行う義務を負っています。そのため、建築中に不具合が発覚した場合、施主は施工業者に修補を求めることが可能です。施工業者が適切に対応すれば問題は解決しますが、修補が遅れる、または拒否される場合は別の手段を検討する必要があります。契約違反を理由に契約を解除する施工業者が修補を行わない場合や、欠陥が重大で補修が不可能なため、契約の目的が達成できない場合は、施主は債務不履行を理由に契約を解除できます(民法第541条・第542条)。ただし、軽微な不具合である場合、契約解除が認められないこともあるため、慎重な判断が必要です(民法第541条但書)。損害賠償を請求する契約解除後、施主は別の施工業者に工事を依頼することになりますが、通常、当初の契約よりも費用が高くなるケースが多いです。このように、本来不要だった追加費用が発生した場合、施主は最初の施工業者に対して損害賠償を請求できます(民法第415条)。対応時の注意点欠陥の判断には慎重を期す建物の不具合を理由に施工業者へ対応を求める際、「欠陥」と判断できるかどうかは、契約内容や施工基準によって異なります。特に、契約書に明確な記載がない場合、施工業者に補修の義務があるかどうかを慎重に確認する必要があります。トラブルを避けるため、契約書や設計図を確認する第三者の建築士に工事監理を依頼するといった対応を取ることが望ましいです。既施工部分の解除には制限がある施工業者に契約違反があったとしても、すでに完成している部分については契約解除の対象外となる可能性があるため注意が必要です。例えば、工事途中で契約を解除した場合でも、施主が利益を得る部分については、その出来高に応じた報酬を支払う必要があります(民法第634条)。引渡し後の対応について工事が完了し、建物が引き渡された後に瑕疵が見つかった場合、契約不適合責任を追及し、施工業者に修補や代金の減額を求めることができます。また、補修が不可能で契約の目的が達成できない場合、契約解除が認められることもあります(民法第541条・第542条)。ただし、完成後の契約解除では、支払った代金の返還請求や建物の撤去が必要となるため、手続きの負担が大きくなる点に注意が必要です。まとめ請負契約の解除は、契約内容や状況によって求められる手続きや負担が異なり、適切な対応を取らなければ損害賠償や追加費用が発生する可能性があります。契約解除の際は、契約書の解除条項を確認し、法的リスクを避けるために専門家へ相談することが重要です。